授業評価 - 2009年度春学期 ドイツ語TAA (ドイツ語文法)

 
私が担当する授業の受講生のみなさんから寄せられた意見、それに対する私のコメントを公開します。
 
2009年度春学期 ドイツ語TAA
 
回答数: 63
教科書: 松尾博史/田中雅敏 『Treppe てくてくドイツ語』 (同学社)
 
1. 以下、@とAのうち、自分の意見にもっとも近いものに○印をつけ、その理由やコメントなどを書いてください。
1) 教科書の内容は学習レベルとして適切でしたか?

  @はい・・・60
  Aいいえ・・・3
理由・コメント
○分かりやすかった。
○本文の内容に自分の身をおきやすく、理解しやすかった。
○入門用として基本から学習できる造りになっていて良かった。
○初めてドイツ語を勉強するのに分かりやすかった。
○巻末に単語集がついているのが良い。
○絵や図を使った説明がなされていて、ゲームなども取り入れてあり興味を持てた。
○ところどころで単語の学習などがあり、理解を深められた。
×もうひとつの授業で使っている教科書とレベルが違いすぎてやりづらかった。
×難しかった。
×もうひとつの授業との差が大きいので、もう少し高くても良いから内容の高度なものでも良かったと思う。
×もっと文法問題がたくさん載っているほうが良かった。
教員より
 この教科書はドイツ語技能検定(独検)5級に準拠するように作られています。独検の5級は2008年秋に新設された級で、それまでは4級がもっとも基礎となる級でした。この教科書は、全14課のうち最後の2課(第13課、第14課)を独検4級に対応させることで、ドイツ語を学ぶうえで基礎となる部分を網羅しています。あと、ドイツ語の「一通りの文法」を扱うには、現在完了形や受動態などの学習が必要で、これは独検3級レベルの話になってきます。しかし、みなさんも、動詞の人称変化、冠詞の変化による名詞の格(文における名詞の働き)の表しかた、文を構成する単語の並べかた(語順)をちょっと意識して正しく使うだけで、みなさんのドイツ語がぐっと自然な響きになることを感じておられるでしょう。これだけの文法でも最低限のことは表現できるのです。みなさんには、身のまわりのことをドイツ語で表現する第一歩として、ドイツ語文法の基礎を楽しみながら身につけていってほしいと思っています。そのためには、みなさんの実際の身のうえにあわせた語彙を使いながら練習するのがもっとも効果的です。そのため、ゲーム感覚の練習を多く用意することによって、みなさんがそのときそのときの自分に必要な語彙や表現を調べて使ってもらえるようにしています。また、文法を記述的な公式のように覚えるのではなく、なぜそのような文法になっているのかを直感的に知ってもらえるように図やイラストを配置しています。本文の内容にみなさんが自分を当てはめて練習できたという意見があったこと、この教科書の特色を評価してもらえたことを、著者のひとりとして嬉しく思います。主人公の Yurie に共感できたら、今度はみなさんが実際にドイツに行ってみてください。東洋大学からは協定校のマールブルク大学に交換留学生として留学できる制度があります。
 なお、もうひとつの授業(ドイツ語TB)の教科書とレベルが違いすぎるという意見については、おそらくドイツ語TBの教科書と比べてこちらの教科書が初歩的すぎたのかもしれません。ただ、こちらは文法重視の「ドイツ語TA」です。「ドイツ語TA」できちんと納得がいくまでドイツ語の文法の仕組みを理解したうえで、「ドイツ語TB」でより応用力を要する表現練習を重ねていってもらえればと思います。みなさんが週に1回ずつ(合計で週に2回)受けている「ドイツ語TA」と「ドイツ語TB」という科目は、それぞれ独立しているのではなく、みなさんがドイツ語で情報を発信・受信していくために必要な練習や解説を総合的に補完しあうものです。ですから、ドイツ語TBの内容で分からないことがあれば私に聞いてもらうことも可能ですし、ドイツ語TAの内容で疑問点があり、私の説明では納得いかない場合はドイツ語TBの先生に解説をお願いするということもどんどんしてください。
 
2) 教科書を進める速度は良かったですか?
  @はい・・・59
  Aいいえ・・・4
理由・コメント
○先生の解説がマッチしていて、毎回進むスピードがちょうど良かった。
○ゆっくり丁寧に説明を繰り返してもらったことで、疑問点を早い段階でクリアにしていけた。
○ちゃんと理解できてから次の単元に進むことができた。
○もうひとつの授業が速めのペースだったので、こちらがゆっくりめでちょうど良かった。
○解説が丁寧で良かった。
○みんなの理解度を確認しつつ進めてもらえた。
○テスト範囲・分量がちょうど良かった。
○速すぎなかったから徐々に理解していけた。
×もう少し速くても良かったと思う。
教員より
 私自身がこの教科書の著者のひとりですので、教科書が意図しているような練習や説明ができるのは大きな利点です。たしかに、「ドイツ語TAは文法重視だ」というと、文法学習をどんどん進めていって、早くドイツ語文法の全体像を学んでしまいたいという意見もあるでしょう。しかし、文法をマスターするだけが目標ではなくて、そこまでで学んだ知識を使ってできる範囲の表現(作文や口頭コミュニケーション)ができるようになることも「文法をマスターする」ことのひとつの要素です。単に筆記試験で文法問題を100%正しく答えられるということだけが文法学習の目的ではないですね。その意味で、ある単元についてきちんと理解できてから次の単元に進めているという意見が多かったことは嬉しいことです。
 しかし、もう少しペースが速くても良かったという意見があるのも事実です。これについては、実は、現状では「ドイツ語TA」と「ドイツ語TB」の担当者がお互いに授業内容を交換できていないということに起因していると思われます。「ドイツ語TA」と「ドイツ語TB」が補完的であるならば、担当者がお互いに授業の進めかたや進度を把握しつつ、解説が必要以上に重複しないようにすることでもっと時間を有効に使えるはずだからです。これについては、単純に私が授業のペースを上げる、あるいは週2回の担当者がお互いに連絡を密に取りあうという解決策がある反面、同じクラスについて週2回の授業(つまり「ドイツ語TA」と「ドイツ語TB」のいずれも)を同じ教員がひとりで担当するという形も時間割編成上可能であれば導入することも検討してみます(今年度については変更できませんが)。
 
3) クラスは、学習する雰囲気として良かったですか?
3−1) 静かさ

  @静かで良かった・・・63
  A集中できなかった・・・0
理由・コメント
○集中できた。
○特別うるさいと感じることがなかった。
○クラス全体が集中していたと思う。
○勉強していて苦に感じない雰囲気だったから。
○ゲームをしたりしてとても興味をもって授業を受けられた。
○無駄な話をしている人がいなかった。
○クラスの雰囲気が本当に良かった。
○楽しむところは楽しむ、聞くところは聞くというメリハリがあった。
○練習するときは元気に、先生の説明を聞くときには静かにできていた。
3−2) 積極性
  @積極的にドイツ語を口に出して練習しようという雰囲気だった・・・58
  Aドイツ語を口に出して練習しようという雰囲気ではなかった・・・2
  無回答・・・3
理由・コメント
○先生が先導して口に出して発音してくれるので、みんな声を出しやすい雰囲気だった。
○みんなが口に出していたから、自分も自然と声を出せる雰囲気だった。
○先生が学生にたくさん個別に質問してくれたので、発言の機会も多く、積極的に学べた。
○発音をしっかりと練習できたことで自信がつき、声に出しやすかった。
○こんな自分もちゃんと発音しようと思えたので、すごい良いクラスだ。
○大きな声を出してくれる人がいたので、良いクラスだと思う。
○みんな楽しんで練習している感じで、声を出しやすかった。
○みんな真剣にドイツ語を学ぼうとしていた。
教員より
 1クラスの人数が40人弱という小規模なグループでの授業であることと、授業の性格上みなさんが教員のいうことを一方的に聞くだけの講義形式ではなく、90分の中でもドイツ語を話す、隣の人と要点について相談して話し合う、自分の書いた作文と隣の人のものを比較するなど、常にドイツ語を使ったインタラクティブな活動ができていることとから、メリハリがあるのだと思います。その意味で、授業に関係ないことを話す人はいないですね。もっと大きな人数が大きな教室に入る大規模な講義だと、いろいろな問題を抱えているのかもしれません。クラス全体が集中して学ぶ雰囲気であればあるほど、90分が経過するのが速いと感じることと思います。私もこのクラスの雰囲気は好きです。この調子で同じメンバーであと半年楽しくやっていきましょう。
 ドイツ語は日本人にとっては比較的発音しやすい言語であるとはいえ、日本語にない音があるのも事実です。できる限りたくさんドイツ語の音声に触れて(教科書に付属のCDを聞いたりして)、耳から入ってきたドイツ語の音を口に出してみて、次は音を自分が口に出したとおりに文字に直すという作業を続けていけば、音と文字の対応関係をマスターできます。最終的には、ドイツ語の音声をドイツ語として頭で理解・処理できるようになりますので、ドイツ語の音を口に出す、たくさんのドイツ語の音に触れるということを続けていきましょう。

 
4) 配布資料は、内容や分量は適切でしたか?
  @はい・・・62
  Aいいえ・・・1
理由・コメント
○ファイリングして保存するのにちょうど良かったから。
○歌が楽しい。
○ドイツ語の歌詞が良かった。
○音楽の資料は、ドイツ語・日本語の対訳になっていて良かった。
○補足資料が分かりやすく、分量もちょうど良かった。
○理解しやすい内容だった。
○教科書よりも若干難しい応用編が書かれていて、理解を深めるのに良かった。
×歌詞の資料は充実していたが、それ以外が少なかったと思う。
教員より
 教科書では文法解説は最小限に抑えられています。その代わり、要点が一目でわかるようにまとめられています。たとえば、Stockwerk 2 では、動詞の現在人称変化が主語が1人称のときと2人称敬称のとき(Stufe 2)、主語が2人称親称のとき(Stufe 3)、主語が3人称のとき(Stufe 4)と細かく区分され、練習や解説が小出しになっていますが、これらを「動詞の現在人称変化」という視点でひとつの表にまとめたものが12ページに掲載されています。個別に深く練習したものを最後に関連する事項とあわせて広い視点で見ることができるようになっているわけです。教科書の記述は端的にまとめられている半面、文法用語の解説(たとえばそもそも「動詞」とは何か、「人称」とは何かなど)もありません。また練習問題も補おうとすれば無数に用意できます。そのような解説の補足や、補足練習、またちょっと応用力を試すような中級問題などをプリントやオンライン(http://online.X-seminar.net)で提供するようにしています。みなさんの授業専用のオンラインサイトは毎回確認するようにしてください。
 
5) 教員の声の大きさ、話すスピード、その他、授業をする姿勢は適切でしたか?
  @はい・・・63
  Aいいえ・・・0
理由・コメント
○分かりやすい授業だった。
○話すスピードが速すぎず適切だった。
○教科書の Dialog の和訳などがたまに速いときもあったが、全体的に適切だった。
○もう少し速く進めても、先生の解説なら丁寧で安心できるのでついていけると思う。
○とても聞きやすいかった。
○ちょうどよくついていけた。
○すべてが良い!と思った。
○ジョークがおもしろかった。
教員より
 期末試験直前は、予定していたテスト範囲まで到達させるために最後は少し駆け足になってしまったと反省しています。授業では週に1回しかみなさんと会えないので、何か言い忘れたことや「このように説明すれば良かった」と後で思うようなことでも、オンラインで補って書くようにしています。
 口頭での説明や板書をふくめて、わかりやすく進められているとすればうれしいことです。秋学期も私の持てる知識をたくさんお伝えします。

 
2.教員に対するコメント、授業の感想、授業の改善案の提案など、自由に書いてください。
・音楽を聴くのが毎回楽しみです。
・映画がとても良かったです(※『ふたりのロッテ』を鑑賞)。
・これからもこのクラスをお願いいたします!
・5階は遠いなあ・・・(※教室が5階)
・遅刻をしないようにします。
・若干教科書の満足度が低く、理解のできにくいところがあった。文法をもっとわかりやすく教えてほしい。
・文法をまとめて教えてほしい。
・ドイツ語を初めて学ぶにあたって、とても分かりやすく授業が進んでいったので、テンポよく勉強することができた。
・初心者に対してわかりやすい授業にしてくれていると思う。
・ゆっくりで教えかたも丁寧で、わかりやすく楽しい授業だった。
・ありがとうございました。
・もっとロックなドイツの音楽も聞いてみたい。
・自分にとって進むスピード、授業の内容がとても合っていて、すごくわかりやすかった。秋学期もこのペースでやっていきたい。
・先生のドイツ語に対する情熱に私もひきこまれた。いまドイツ語の勉強を楽しめています。
・教科書の値段が高かったと思う。ただ、授業はいい授業だと思う。
・授業の冒頭の音楽鑑賞を秋学期も続けてほしい。
・授業のはじめに聴く歌が楽しかった。ドイツ語のゲームをしたり、映画を見たりして、たのしくドイツ語を覚えられたと思う。
・毎回の音楽鑑賞はとても勉強になる。
・授業の速度も授業内容もちょうど良いと思います。このまま続けてほしい。
・単に教科書をこなしていくだけでなく、さまざまな形でドイツ語に触れられる授業だった。
教員より
 授業の最初に聞く音楽は、ドイツの音楽を知るというだけでなく、歌詞の中に描かれているドイツ人の世界観なども感じてみてください。もちろん、生きたドイツ語として、いろいろな言い回しや単語、表現を勉強できる教材にもなることは言うまでもありません。
 教科書の満足度が低いという意見については、教科書には文法の練習問題が少ないということが関係しているのかもしれませんね。この教科書は、文法もきちんと解説してありますが、それと同時にコミュニケーションの練習をたくさん取り入れてあります。ほとんどの練習が、文法の確認問題である場合でも、書いて終わりではなく、それをペアで発表しあったり、内容を自分たちにそくしたものに変えて実際に対話をするといった形になっています。実際に口に出してみることで、文法を確認して、また自分たちに必要な語彙や表現を覚えていくという形式になっています。ですから、いわゆる筆記型の文法問題はあまり多くありません。文法解説に必要な情報、また練習問題の補充は、プリントで配布したり、オンライン上に用意していくつもりです。
 文法をまとめて教えてほしいという意見についても、この教科書の特性に関係しているものと思われます。この教科書は、単元ごとに文法が小出しになっています。それぞれを小出しで徹底的に練習するのは良いことですが、その後でどこかのタイミングで、関連するすべての事項をまとめて把握できるような機会が必要だということだと思います。これについても、補足資料を活用する形で提示していくつもりです。
 教科書の値段が少し高めなのは、独検5級の模擬試験問題(筆記・聞き取り)が付録としてついている教科書だからです。独検5級を想定した模擬問題ではありますが、水準はじゅうぶんに4級でも通用するものをオリジナルで作っています。これはみなさんの手元にはまだ配っていませんが、実際にみなさんが独検5級や4級に挑戦されるときに本番さながらで問題に取り組んでもらえます。独検を受験する予定のない人にも、教科書の付録教材として配布したいと思います。縁があってはじめたドイツ語ですから、簡単な内容であればドイツ語で話して、聞いて、書いて、読めるようになりたいものです。自分のドイツ語能力を客観的に知るためにも、独検4級水準の問題に取り組んで、自分の習熟度を確認してください。
 あとは、春学期と同じように続けてもらえればという意見が大半ですね。秋学期も同じスタイルを続けます。秋学期は季節柄、ドイツのクリスマスや新年の迎えかたなどもテーマに、いろいろと情報を提供できることと思います。お楽しみに。
 いまこの私のコメントを読んでくださっているこの瞬間も、ドイツやオーストリアではドイツ語による何気ない会話が繰り広げられています。
みなさんがドイツ語という言語の学習を切り口にして、言語(ことば)の面白さに気づいてくださればうれしいです。ドイツ語の文法に向き合うことで、私たちの母語である日本語の文法や仕組みも見えてきます。私たちは、授業でドイツ語を教えたり学んだりするのに、自分たちの母語である「日本語」という言語を使っています。この場合の日本語は「メタ言語」と呼ばれます。ある言語を記述するための手段として使われる言語のことで、ふつう、メタ言語で他の言語を記述しているときにはメタ言語の文法は考えません(あくまでも記述の道具なので)。しかし、私の授業では、ドイツ語の学習をしながら、メタ言語である日本語についても一定程度考えていこうと思っています。一瞬にして長い文を頭の中で処理して理解したり、また発話できる人間の言語能力はすごいですね。ドイツ語の学習は、単なる語学の勉強ではなく、言葉を高度にあやつる人間の科学でもあるのです。私のドイツ語やことばに対する情熱が伝わっているようで嬉しく思っています。
 
(2009年10月15日更新)